採光が確保できない場合 「非常用照明」を設置すればよいのか?

単体規定

採光を確保できない場合は「非常用照明」を設置すれば問題なし。と思っている方は少なくないと思います。

結論:採光を確保できない場合はその建築物の用途及び構造によって対応方法が変わります。

本記事では採光を確保できない場合の対応方法を解説します。

※各無窓居室の違いについては別の記事で解説いるため、ご確認ください。

無窓居室の違いについて解説(採光・換気・排煙)

義務採光と採光無窓の確認のための採光の違い

まず、採光計算には2種類存在します。

義務採光建築基準法第28条に規定されている採光計算で「住宅」「保育園」「学校」などの特定の用途にかかり用途に応じて採光面積を確保する必要がある。

採光無窓の確認のための採光建築基準法第35条の3施行令第111条に規定されている採光計算ですべての建築物に制限がかかり、採光面積を1/20確保する必要がある。

この2つの採光計算の違いは「義務採光」は必ず確保する必要がある が採光無窓の確認のための採光」は採光を確保できない場合、各基準を満足できれば採光を確保する必要がない となります。

採光計算に必要な計算式や採光補正係数の考え方についてはこちらをご確認ください。

採光計算の計算方法・採光補正係数とは

採光無窓の確認のための採光 の基準

まず、採光計算においての必要採光面積は下記の通りです。

法文居室の種類割合
法第28条 (施行令第19条)幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校の教室、保育園の保育室1/5
住宅の居住のための居室1/7(1/10)
病院・診療所の病室、寄宿舎の寝室、下宿の宿泊室、児童福祉施設等の寝室(入所する者の使用するものに限る。)、児童福祉施設等(保育所を除く。)の居室のうちこれらに入所し、又は通う者に対する保育、訓練、日常生活に必要な便宜の供与その他これらに類する目的のために使用されるもの1/7
上記以外の学校以外の教室、病院・診療所・児童福祉施設等の居室のうち、入院患者・入所者の談話、娯楽等の目的のために使用されるもの1/10
法第35条 全ての居室1/20
法第35条の3 全ての居室1/20

採光無窓の確認のための採光」は建築基準法第35条の3施行令第111条)に規定されている基準で「1/20以上の採光面積を確保する」 を満足しているかが 採光無窓の判断となります。

ちなみに義務採光の場合は「採光無窓」という概念はないため、必要採光面積を確保する以外の対応はありません。

採光無窓になった場合の対応

採光無窓になった場合(1/20以上の採光面積を確保できない場合)は建築基準法第35条の3の規定がかかります。

具体的な対応として

  • 採光無窓居室の主要構造部を耐火構造で区画する
  • 採光無窓居室の主要構造部を不燃材料で造る
  • 施行令第111条第1項第二号より 避難上有効な開口部を設ける
  • 告示249号の対応(自動火災報知設備)

となります。 

ちなみにここで勘違いしやすい内容として 主要構造部を 「区画する」「造る」の違いについて解説します。

区画する」はその部屋とそれ以外の部屋を耐火構造で区画することです。

区画する必要があるため、壁は天井裏もしくは小屋裏まで達せしめる必要があり、区画貫通処理も必要になります。

この注釈は建築基準法に記載はありませんが、年1回行われている建築行政会議で、指針が出ているため、指定確認検査機関から指摘を受けることがあります。

「造る」はその部屋を不燃材料で造る必要があるため、下地も含めて不燃材料で造ることが求められます。

したがって、木造建築物の場合は、「採光無窓居室を不燃材料で造る」の対応はできません。

木造建築物の場合は、施行令第111条第1項第二号 もしくは 告示249号の対応になります。

施行令第111条第1項第二号 の規定では該当する無窓居室から

「直接外気に接する避難上有効な構造のもので、かつ、その大きさが直径1.0m以上の円が内接することができるもの 又は その幅及び高さが、それぞれ、75cm以上及び1.2m以上のもの」

を満足できる開口部を設けることで1/20の採光面積を確保する必要がなくなります。

直接外気に避難することが条件のため、1階の採光無窓居室にのみ適用ができるため、注意が必要です。

告示249号(自動火災報知設備)の基準

告示249号 の対応としては下記の条件をすべて満足する必要があります。

  • 居室は就寝用途(寝室、宿直室など)でないこと
  • 以下のいずれかに該当すること
    • 居室の床面積が30㎡以内であること。
    • 避難階にある居室の場合:居室の各部分から屋外への出口に至る歩行距離が30m以下
    • 避難階の直上階 or 直下階にある居室の場合:居室の各部分から避難階における屋外への出口、または屋外避難階段(令第123条第2項)に至る歩行距離が20m以下
  • 自動火災報知設備(令第110条の5に規定する基準による)を設けること

この自動火災報知設備は無窓居室だけではなく、建物全体に設置が必要なため、注意が必要です。

非常用照明を設置すればよいのか?という疑問

ここまでの内容で「採光無窓居室に非常用照明を設置する」という考えは間違っているのか? と思うかもしれませんが、間違いではありません。

無窓居室で非常用照明を設置する」は 建築基準法第35条施行令第126条の4の規定より 非常用照明の設置が必要なためです。

したがって、上記で解説をした「建築基準法第35条の3」とは別の法文になるため、採光無窓の対応にはならず「採光無窓居室に非常用照明を設置すればOK」という解釈にはならないということです。

まとめ

採光無窓のについて再度紹介させていただきます。

  • 義務採光と採光無窓の確認のための採光 がある
  • 義務採光は必要採光面積を確保する方法以外ない
  • 採光無窓の場合は必要な条件を満たせば対応が可能
  • 木造建築物の場合は「主要構造部を不燃材料で造る」では対応できない
  • 告示249号の場合はすべての居室に自動火災報知設備が必要
  • 採光無窓の場合は非常用照明の設置も必要

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